アマゾンのおすすめ商品でやたら勧めてくるので買ってみました。

卒業
卒業
posted with amazlet on 07.01.27
重松 清
新潮社
売り上げランキング: 3328
おすすめ度の平均: 4.5
4 死の重みをみつめて
4 それぞれの卒業
5 母と息子の関係に涙。

4つの短編が収められています。最近は連作短編ばかり読んでて、単なる短編集は久しぶり。あたしは実は短編集は苦手なんだけど、この本は4話すべてテーマが一緒なので統一感もあり、とても読みやすくて入り込みやすかったです。そしてそれぞれの物語は100ページ前後あるので一話一話はとてもしっかり作ってあって、読み応えもあります。


テーマは「卒業」というより「人の死」。
どの物語も主人公は30代後半〜40代の男性。もうすぐ命の火が消えようとする母親(まゆみのマーチ)、壮絶に末期ガンと戦う父親(あおげば尊し)、自殺してしまった親友とその娘(卒業)、幼いころ死んでしまった母親への想いと義理の母との衝突(追伸)。
死を目の前にした人の想い、そして残された人々がそれを「乗り越え」、そして「赦す」こと。それがこの本の「卒業」という意味。死んでしまえば何もかも赦されるというのは日本人独特の感覚かもしれないけど、重松さんが描くものは真摯に「死」と向き合う人たちが、自分の中に抱くわだかまりと戦い、それを乗り越えること。重松さんが描く「死」はどれも尊く、重く、そして深い。


あたしが一番惹かれた話は表題の「卒業」ではなく、「追伸」。小さいころに亡くした産みの母の思い出・・・きっとある程度美化された思い出を引きずるひとり息子の敬一、永遠に勝てない産みの母との思い出に立ち向かう継母・晴子(ハルさん)の葛藤。産みの母と正反対の性格の継母と息子は衝突を繰り返すのだけど、継母の思いが強すぎるのか表現が下手すぎるのか、あるとき決定的な衝突が起きてしまい、息子は家を飛び出して家に近寄らなくなります。その息子はやがて小説家になり、産みの母を想いながら架空の母親とを作り上げてエッセイの連載を始めてしまうのです。それは産みの母へのメッセージであると同時にハルさんへのあてつけでもありました。
しかしハルさんが一生懸命作ったスクラップブック、そして亡き母の思い出のノートを書き写したハルさんのノートを実家で見たとき、ハルさんの不器用だけどまっすぐな母親としても想いに触れ、ようやく敬一は産みの母の死を乗り越えることができたのでした。
あたしも父親が亡くなって、そのあとまもなく母親に恋人ができて、半同棲みたいな生活になって、実家に帰るとそのひとがいつもいて、そのひとが妙に気を使ってくるのがとても居心地が悪くて、父親を“裏切った”母親に当たり、父の死を汚されたような想いになりました。結局母の恋人とはとても仲良くなり、母親には「お父さんがほしいな」って冗談で言えるほどになったんだけど、そのひとも肝臓ガンで2年前に逝ってしまい、今は母親はもう老人ホームに入ってしまいました。もっともっと一緒にすごしてあげられる時間を作ってあげればよかったなとか、あの時あんなこと言わなきゃよかったっていう公開ばかり引きずってしまってる。
そんなことがあったから、なんとなく敬一の気持ちもわかる。不器用でガサツなハルさんの気持ちもとてもわかる。分かり合えるのに時間がかかることもあるけど、わかろうとしてるから衝突しちゃうわけで、それは決して悪いことじゃない、のかもしれません。


評価は★★★☆☆。ホントは★4つにしてもいいのだけど、他の作品との評価のバランスから、限りなく4つ星に近い3つってことにしておきます。